チェンニーノ・チェンニーニ(Cennino Cennini)の著した『芸術の書』(IL LIBRO DI ARTE)に従って、忠実に再現した【天然ウルトラマリン】
青色成分を80%以上にまで濃縮した最極上品です。
絵具の原石であるラピスラズリ (lapis lazuli) は、方ソーダ石グループの鉱物である青金石(lazurite)を主成分とし、同グループの方ソーダ石(sodalite)・藍方石(hauynite)など複数の鉱物が加わった類質同像の固溶体の半貴石です。
産地は美術史に古くから登場するバタフシャン(アフガニスタン)をはじめ、チリ、アメリカ、コロラド州などで、鉱脈は非常に限られています。
ラピスラズリのラピス(Lapis)はラテン語で”石”を指し、ラズリ(Lazuli)は”青”や”空”を意味するペルシャ語の”lazward”が語源とされています。和名は瑠璃(るり)と云い、サンスクリット語のヴァイドゥーリャ(Vaidurya)の音訳であると言われます。また、深い青色から藍色が美しく、しばしば黄鉄鉱の粒を含んで夜空の様な輝きを持つことから、古代ローマの博物学者プリニウス(Gaius Plinius Secundus)はラピスラズリを「星のきらめく天空の破片」と表現しました。
粉末にして絵具に用いたのは、6-7世紀におけるアフガニスタンの寺院の洞窟画が初見とされ、バーミヤン石窟(アフガニスタン)、キジル洞窟(中国ウイグル自治区)などで鮮やかな彩色が残っています。ヨーロッパにおいては、絵具の原石がアフガニスタンから海路でイタリア・ヴェネツィアに運ばれて来る事からウルトラマリン(Azurrum Ultramarinum [海を越えてもたらされた青])と呼ばれるようになります。
このウルトラマリンの精製法は、13世紀初頭にヨーロッパで急速に発達し、ルネサンス期における大変重要な顔料となります。
使用例は14-15世紀にかけて最盛期をむかえ、フラ・アンジェリコ(Fra' Angelico)の『受胎告知』(1430年頃)やランブール兄弟(Frères de Limbourg)の装飾写本『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』(15世紀)などウルトラマリン顔料を語る上で欠かすことのできない作品の多くが、この時期に制作されています。
ウルトラマリンは、ラピスラズリを粉末化しただけでは作る事の出来ない顔料です。
たとえ、ラズライト(青金石)含有量の多い最高級クラスの原石を用いたとしても、やや灰色を帯び、その青の濃さには限界が生じます。フラアンジェリコの作品に残るような鮮やかな濃紺色を得るためはラピスラズリから青色の成分だけを抽出し、青色を濃縮する必要がありました。
その抽出方法について、15世紀の芸術家であるチェンニーノ・チェンニーニ(Cennino Cennini) は、その著書『芸術の書』(IL LIBRO DI ARTE)において次のように記述しています。
「粉砕した原料を溶かした蝋、樹脂、油と混ぜ合わせ、できた塊を布に包み、うすい灰汁の中でこねる。青色の粒子が容器の底に沈み、不純物や無色の結晶は塊の中に残る。この工程を3回以上繰り返す。あとから滲出してくるものほど等級は劣る。」
煌々とした青色を放つ最良のウルトラマリンの抽出量は、ラピスラズリ粉末の2~3%にすぎません。非常に高価な顔料であるため、芸術家たちはキリストのローブやマリアのマントなど、ごく限られた部分を彩るためのみに用いました。さらに使用量を節約する為、下塗りにアズライト(天然群青MountainsBlue)を使うなどの工夫の跡も数多く残っています。
1828年、テュービンゲン大学のクリスティアン・グメリン(Christian Gmelin)によって合成(人工)ウルトラマリンの製法が発表さます。顔料として高品質であり、且つ安価に生産可能な合成品の登場により、ラピスラズリから抽出する天然ウルトラマリンは姿を消して行く事となります。
本品は、最高級と言われるアフガニスタン産のラピスラズリを粉末精製処理した後、チェンニーノ・チェンニーニの製法を忠実に再現し、ウルトラマリンを抽出濃縮いたしました。
なお、チェンニーニの著した製法上の特性として、樹脂分が必ず残留する事が挙げられますが、本品はこの樹脂分の洗浄作業を入念に施しておりますので、水性メディウムとの馴染がよく、油彩・テンペラ・日本画・水彩画とジャンルを問わず、お好みのメディウムで溶きおろしてご使用いただく事が出来ます。
古法に従い復活させた、青色成分80%以上の最高級天然ウルトラマリンです。
【色について】お使いのモニター環境等によって、画面上と実際の色とは多少異なってしまいます。この点をあらかじめご了承の上、参考程度にご覧下さい。
商品情報 | |
原石 | アフガニスタン産ラピスラズリ(和名:瑠璃) |
粒度 | 岩絵具12~13番程度 |
濃縮度 | 80%以上 |
容量 | 8g ガラス瓶入り |
使用法 | 膠・アラビアガム・油などの絵画用メディウムで溶いて使います。 |
注意事項 |
お使いのモニター環境等によって、画面上と実際の色とは多少異なってしまいます。この点をあらかじめご了承の上、参考程度にご覧下さい。 絵画材料以外での用途には使用しないで下さい。 人体に使用しないで下さい。 目・口・鼻に入らないようにして下さい。 使用時は防護具を着用して下さい。 使用後は手をよく洗って下さい。 お子様や扱いに不慣れな方の手の届かない所に保管して下さい。 |
<色について>
色調見本は、ご使用のモニター環境によって実際の色とは異なって見える事があります。 また、製造ロットによって色味が多少の差異が生じる場合がございます。あらかじめご了承の上、参考程度にご覧いただきますようお願いいたします。